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国家試験対策問題
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第87回 国家試験対策過去問題

国家試験

図のような体位でドレナージを行う肺葉はどれか。(第100回)

①右上葉

②右下葉
③左上葉
④左下葉

  1. 右上葉
    右上葉や左上葉のドレナージを行うには上葉を最も高くしなければならず、仰臥位で上体を起こす必要がある。あるいは半坐位・腹臥位で、ドレナージしたいどちらかの肩を高くする。
  2. 右下葉
    右下葉のドレナージを行うには頭を低くした左側臥位(左が下)あるいは頭を低くした腹臥位とする。
  3. 左上葉
    右上葉や左上葉のドレナージを行うには上葉を最も高くしなければならず、仰臥位で上体を起こす必要がある。
  4. 左下葉
    頭を低くした右側臥位(右が下)では、左下葉のドレナージができる。

重力を利用して、痰や気道分泌物を高い位置から低い位置へ移動させるのが、体位ドレナージである。

気管内吸引時に起こしやすい合併症はどれか。(第97回)

①気 胸
②皮下気腫
③肺塞栓症
④低酸素血症

  1. 気 胸
    気管内吸引によって気胸が生じる可能性は少ない。
  2. 皮下気腫
    気管内吸引によって皮下気腫は生じない。皮下気腫は損傷した肺や気管から漏れた空気が皮下組織に到達して膨らむものである。痛みはなく、その部分の皮膚を圧迫すると雪をつかんだような感覚(握雪感)があるのが特徴である。
  3. 肺塞栓症
    気管内吸引によって肺塞栓症を生じる可能性は少ない。肺塞栓症は下肢の深部静脈でできた血栓などで生じる。
  4. 低酸素血症
    気管内吸引を行っているときは分泌物とともに気管内の気体も吸っており、酸素も吸われている。そのため低酸素血症に陥る危険がある。

不適切な気管(内)吸引によって、低酸素状態のほか、感染のリスクや粘膜の損傷が生じるため、正しい手技で行う。

AEDの機能はどれか。(第98回)

①止 血
②除細動
③気道確保
④静脈確保

  1. 止 血
    AEDの機能は止血ではない。
  2. 除細動
    AEDは患者の胸部にパッドを装着後、自動で心電図を解析し、危機的な不整脈に対して除細動のショックボタンを押すよう指示する。目的は除細動である。
  3. 気道確保
    AEDの機能は気道確保ではない。
  4. 静脈確保
    AEDの機能は静脈確保ではない。

AEDとは自動体外式除細動器である。

創傷部位の創面の管理について正しいのはどれか。(第103回)

①洗浄する。
②加圧する。
③乾燥させる。
④マッサージする。

  1. 洗浄する。
    創面の細菌、血液・リンパ液、壊死組織などを除去するため創部の洗浄を行い、湿潤環境を維持するのが創傷の治癒を早める。
  2. 加圧する。
    創傷が治癒する過程には炎症反応や肉芽組織の増殖などがあるが、加圧やマッサージなどの不適切な刺激は炎症期の持続や肉芽組織のダメージの原因となる。また加圧によって血液循環が妨げられる恐れもある。
  3. 乾燥させる。
    創傷を乾燥させると炎症期が持続したり、肉芽組織が死滅する可能性がある。
  4. マッサージする。
    創傷が治癒する過程には炎症反応や肉芽組織の増殖などがあるが、加圧やマッサージなどの不適切な刺激は炎症期の持続や肉芽組織のダメージの原因となる。またマッサージによって血液循環が妨げられる恐れもある。

従来には創傷を乾燥させるケアをしていたが、現在では創傷は湿潤環境を維持するようなケアをする。

赤色のトリアージタグが意味するのはどれか。(第108回)

①死亡群
②保留群
③最優先治療群
④待機的治療群

  1. 死亡群
    死亡群は黒色となる。
  2. 保留群
    保留群は緑色となる。保留群という表現がわかりにくいが、軽処置群と同じ意味である。
  3. 最優先治療群
    最優先治療群は赤色となる。
  4. 待機的治療群
    待機的治療群は黄色となる。

トリアージはフランス語で「仕分ける、選別する」を意味し、災害現場などで治療優先度を決定することを指す。トリアージタッグは原則として右手首に装着され、色による治療優先度は赤(Ⅰ:最優先治療群)→黄(Ⅱ:非緊急治療群)→緑(Ⅲ:軽処置群)→黒(0:救命が不可能な不処置群)で表される。

褥瘡の洗浄液で適切なのはどれか。(第101回)

①エタノール
②生理食塩液
③ホルマリン
④クロルヘキシジン

  1. エタノール
    褥瘡は創部であり、エタノールは刺激性が高いため適さない。
  2. 生理食塩液
    褥瘡はまず洗い流し、汚れ・血腫・滲出液などを取り除く。それには生理食塩水や水道水で洗浄するのが最も適切である。
  3. ホルマリン
    ホルマリンは消毒・組織固定・防腐のために使用するが人体には有害である。創部である褥瘡に使用できない。
  4. クロルヘキシジン
    明らかに感染があると認められている褥瘡に対しては、殺菌作用のある洗浄剤の使用や消毒を行うことがある。クロルヘキシジンなどの消毒薬は組織傷害性があることから、消毒後に残さないよう生理食塩水などで洗浄する。

褥瘡は創部なので創部を洗浄するのに適しているのはどれかを考える。

仰臥位における褥瘡の好発部位はどれか。(第109回)

①踵骨部
②内顆部
③膝関節部
④大転子部

  1. 踵骨部
    仰臥位では、踵骨部にできやすい。
  2. 内顆部
    内顆部にできやすいのは、側臥位である。
  3. 膝関節部
    膝関節部にできやすいのは、腹臥位や側臥位である。
  4. 大転子部
    大転子部にできやすいのは、側臥位である。

仰臥位では、後頭部、肩甲骨部、肘頭部、仙骨部、踵骨部などに褥瘡ができやすい。体位によって異なるので、確認しておこう。

部位と流れる血液との組合せで正しいのはどれか。(第95回)

①肺動脈 ― 動脈血
②肺静脈 ― 静脈血
③右心房 ― 動脈血
④左心室 ― 動脈血

  1. 肺動脈 ― 動脈血
    ある臓器へと向かって動脈血を運ぶのが動脈であるが、肺動脈の場合は肺で二酸化炭素と酸素の交換を行うので、肺へ向かっていく肺動脈は二酸化炭素を多く含む静脈血が流れている。したがって肺動脈―静脈血が正しい。
  2. 肺静脈 ― 静脈血
    ある臓器から出て静脈血を運ぶのが静脈であるが、肺静脈の場合は肺で二酸化炭素と酸素の交換を行うので、肺から出る肺静脈は酸素を多く含む動脈血が流れている。したがって肺静脈―動脈血が正しい。
  3. 右心房 ― 動脈血
    右心系は全身から戻ってきた静脈血を肺へと送り出すので、右心房には静脈血が流れている。したがって右心房―静脈血が正しい。
  4. 左心室 ― 動脈血
    左心系は肺から送られた動脈血を全身に送り出すので、左心室には動脈血が流れている。左心室―動脈血の組合せは正しい。

体循環と肺循環に関する基本的な問題である。

受精卵の正常な着床部位はどれか。(第100回)

①卵 巣
②卵 管
③子宮体部
④子宮頸部

  1. 卵 巣
    卵巣で受精卵が着床するのは異常である。
  2. 卵 管
    卵管で受精卵が着床するのは異常である。
  3. 子宮体部
    正常な着床は子宮体部の内膜で行われる。
  4. 子宮頸部
    子宮頸部で受精卵が着床するのは異常である。

受精は卵管膨大部、着床は子宮体部の内膜である。卵巣、卵管、子宮頸部などに着床すると異所性妊娠となる。

正期産の定義はどれか。(第105回)

①妊娠36週0日から40週6日
②妊娠37週0日から41週6日
③妊娠38週0日から42週6日
④妊娠39週0日から43週6日

  1. 妊娠36週0日から40週6日
    36週0日から40週6日ではない。
  2. 妊娠37週0日から41週6日
    37週0日から41週6日が正しい。なお、妊娠40週0日は40×7=280日となり、最終月経から分娩予定日までの日数となる。
  3. 妊娠38週0日から42週6日
    38週0日から42週6日ではない。
  4. 妊娠39週0日から43週6日
    39週0日から43週6日ではない。

妊娠期間はある週を○週0日から○週6日という表現をする。0~6で7日であることに注意する。妊娠22~37週未満に出産するのが早産、妊娠37~42週未満の間に出産するのが正期産、妊娠42週以降に出産するのが過期産である。

体温を調節しているのはどれか。(第104回)

①橋
②小 脳
③中 脳
④視床下部


  1. 橋は延髄や中脳とともに脳幹を構成する。脳幹は生命維持や意識状態の維持に関わる。橋は錐体路の通り道であるほか、いくつかの脳神経の核である。体温調節中枢ではない。
  2. 小 脳
    小脳は運動機能の統合的な調節を担う。体温調節中枢ではない。
  3. 中 脳
    中脳は錐体外路系に関係し、姿勢反射の中枢である。いくつかの脳神経の核である。
  4. 視床下部
    体温調節中枢は間脳の視床下部にある。そのほか、体液の浸透圧、性機能の調節や空腹・満腹中枢がある。

脳の部位別の主な機能を整理しておこう。

不随意筋はどれか。(第105回)

①心 筋
②僧帽筋
③大殿筋
④ヒラメ筋

  1. 心 筋
    心筋は不随意筋である。
  2. 僧帽筋
    僧帽筋は上半身の骨格筋であり、随意筋である。
  3. 大殿筋
    大殿筋は殿部の骨格筋であり、随意筋である。
  4. ヒラメ筋
    ヒラメ筋は下腿の骨格筋であり、随意筋である。

骨格筋は随意筋で、心筋と平滑筋(平滑筋は心臓以外の内臓や血管の壁を構成する)は不随意筋である。

運動性言語中枢はどれか。(第108回)

①中心後回

②大脳基底核
③Broca〈ブローカ〉野
④Wernicke〈ウェルニッケ〉野

  1. 中心後回
    大脳皮質の中心溝のすぐ後ろには中心後回があり、体性感覚野がある。運動性言語中枢はない。
  2. 大脳基底核
    大脳基底核は錐体外路系に属する中枢で、運動の調節に関係する。本能行動、情動行動などの制御を担う大脳辺縁系の機能ももつ。
  3. Broca〈ブローカ〉野
    優位側の大脳半球の連合野に運動性言語中枢であるブローカ野がある。
  4. Wernicke〈ウェルニッケ〉野
    優位側の大脳半球の連合野に感覚性言語中枢であるウェルニッケ野がある。

大脳の機能局在について整理しておこう。

大腸で吸収されるのはどれか。(第109回)

①脂 質

②水 分
③糖 質
④蛋白質

  1. 脂 質
    脂質は、胃液・膵液のリパーゼで脂肪酸とグリセリンに分解され、小腸上皮細胞から吸収され、リンパ管内に入る。
  2. 水 分
    栄養素の吸収のメインは小腸で、大腸が吸収するのは水分である。
  3. 糖 質
    糖質はブドウ糖(単糖類)まで分解され、細胞膜にある輸送蛋白質(担体)と結合し、小腸上皮細胞内に吸収され、毛細血管内に入る。
  4. 蛋白質
    蛋白質はアミノ酸まで分解され、単糖類と同様に小腸上皮細胞内に吸収され、毛細血管内に入る。

大腸の主な機能は、小腸から送られてきたものから、水分を吸収し、糞便を形成することである。

車椅子による移送で適切なのはどれか。(第100回)

①エレベーターを利用するときは、エレベーターの中で方向転換する。
②移乗する前にフットレスト<足のせ台>を上げる。
③急な下り坂では前向きに車椅子を進める。
④段差は勢いをつけて乗り越える。

  1. エレベーターを利用するときは、エレベーターの中で方向転換する。
    後ろ向きにエレベーターに乗り込むよう方向転換しておく。目的階に到着したときに前進することでエレベーターから出られるからである。
  2. 移乗する前にフットレスト<足のせ台>を上げる。
    移乗する前にフットレストを上げて、床に足が付くようにする。フットレストに体重がかかると車椅子が傾いてしまう。
  3. 急な下り坂では前向きに車椅子を進める。
    急な下り坂では患者が滑り落ちないよう後ろ向きで車椅子を進める。
  4. 段差は勢いをつけて乗り越える。
    段差の前で止まり、ティッピングレバーを踏んで前輪を持ち上げ段差を乗り越える。勢いはつけない。

車椅子などへ乗り移ることを移乗、車椅子などで場所を移動する援助を移送という。

右片麻痺患者の寝衣交換で適切なのはどれか。(第103回)

①左から脱がせ、右から着せる。
②左から脱がせ、左から着せる。
③右から脱がせ、左から着せる。
④右から脱がせ、右から着せる。

  1. 左から脱がせ、右から着せる。
    健側から脱がせ、患側から着せているため正しい。
  2. 左から脱がせ、左から着せる。
    健側から脱がせているが、健側から着せているため誤り。
  3. 右から脱がせ、左から着せる。
    患側から脱がせ、健側から着せているため誤り。
  4. 右から脱がせ、右から着せる。
    患側から着せているが、患側から脱がせているため誤り。

麻痺や障害により動きが制限される側があるときは、寝衣の自由度が高い状態で患側を扱うようにする。原則として健側から脱がせ、患側から着せる(脱健着患)。本設問では右片麻痺の設定のため、左から脱がせ、右から着せるのが正しい。左右いずれかの腕に持続点滴をしているときも同様の考え方で行う。

陰部洗浄に使用する湯の温度で最も適切なのはどれか。(第109回)

①30~31℃
②34~35℃
③38~39℃
④42~43℃

  1. 30~31℃
    30~31℃では低い。
  2. 34~35℃
    34~35℃では低い。
  3. 38~39℃
    38~39℃は正しい。
  4. 42~43℃
    42~43℃では高すぎる。

陰部洗浄の湯温は、体温よりやや高い38~40℃程度である。

足浴に使用する湯の温度で最も適切なのはどれか。(第110回)

①26~28℃
②32~34℃
③38~40℃
④44~46℃

  1. 26~28℃
    26~28℃では低すぎる。
  2. 32~34℃
    32~34℃では低すぎる。
  3. 38~40℃
    体温より少し高めの38~40℃が適している。冷めた場合を考えて少し高めのさし湯を用意しておく。
  4. 44~46℃
    44~46℃では高すぎる。

清拭、入浴、足浴、手浴、陰部洗浄などに使う湯の温度は必須の知識である。

インシデントレポートで正しいのはどれか。(第99回)

①実際に事故が発生するまでは報告しない。
②法令で書式が統一されている。
③当事者以外が報告してよい。
④警察署への届出義務がある。

  1. 実際に事故が発生するまでは報告しない。
    医療事故が起きたときだけでなく起こしそうになった・医療事故の発生につながる可能性の高い事象を認識した場合にもインシデントレポートを作成する。したがって実際に事故が発生するまで報告しないというのは適切ではない。
  2. 法令で書式が統一されている。
    法令で書式は統一されていない。
  3. 当事者以外が報告してよい。
    医療事故が起きたときだけでなく起こしそうになった・医療事故の発生につながる可能性の高い事象を認識した場合にもインシデントレポートを作成するが、当事者だけでなく、エラーを認識した当事者以外の人が気づいた時点で記述してもよい。
  4. 警察署への届出義務がある。
    法令による規定はなく、警察への届出義務もない。

インシデントレポートについては法律などで規定された書式などがあるわけではないが、基本的なルールはあり、それらが出題される。

転倒・転落の危険性が高い成人の入院患者に看護師が行う対応で正しいのはどれか。(第108回)

①夜間はおむつを使用する。
②履物はスリッパを使用する。
③離床センサーの使用は控える。
④端坐位時に足底が床につくベッドの高さにする。

  1. 夜間はおむつを使用する。
    成人の患者なので転倒・転落のリスクだけでおむつを使用するのは適切とはいえない。リスクが高いのは排泄行為だけではないので、安全に移動できる環境が必要である。
  2. 履物はスリッパを使用する。
    スリッパは脱げやすいためかかとのある靴を使用する。
  3. 離床センサーの使用は控える。
    患者の尊厳を守りつつ、離床センサーを適切に使用することは正しい。
  4. 端坐位時に足底が床につくベッドの高さにする。
    端坐位で足底が床につく立ち上がりやすいベッドの高さに調整することが転倒・転落の防止につながる。ベッド周囲を整理整頓すること、濡れた床を放置しないことなども防止効果がある。

転倒・転落の危険性が高いと判断した場合には、患者ごとに対策を立てる必要がある。

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